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製本さまざま   

最近製本三昧の日々を送っているので、その作った本たちを紹介してみようと思います。製本のなんら解説をすることなく、製本した本にまつわる個人的な思い出に偏った解説付きです。

・布装丁の本
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麻糸で縫い、背を丸くして作った初めの本。初めてで何が何かよくわからずとにかく言われるがままにノートをとり、先生の手本に習って作った作品。布を全体に貼った後、背の糊の付け方が悪くうまく丸くならなかったため、「注射器で糊を注入する」という裏技を用いて修正を試みたにもかかわらず、改善されずもう一度やり直しました。本は、適当に「2色刷で可愛げ」という理由だけで選んだので、タイトルが『combat de bêtes(野獣の戦い)』という厳ついものに…(これでもポエム集)。いかついついでに、中のマーブル紙を赤と黒のを選んで(安かった)貼り付けたら、どうも『中を開くと地獄色』な本になってしまいました…。自分でもあまりにもあんまりだったので(笑)、あとで濃青のマーブル紙に貼り替えたという思い出の作品。

・布装飾の本
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布の下に装飾を入れて表面に浮き出ているのがお分かりでしょうか。中は聖書の物語を題材にした冒険ものの小説なのに、表紙は「赤に椿」というばりばり日本的な本。あぁ。この装飾は両面にあります。
普通、硬いハードカバーの本には、背と本の段差を埋めるのに飾りの小さな帯があるのをご存知だと思います。今回のこの本では、その飾り帯を糸と針で縫うのを習いました。昔はこれを全部手で作ってたんですよね。感動です。こういう細かい作業は本当に器用不器用が出るところなのですが、先生が説明する時に一言、「この行程は、日本人は特に上手にします」と…。そんな、日本人で一くくりにされては困ります(苦笑)。
フランス人は、何よりもまず美(イメージ)からものを考えるなあとつくづく思っているのですが、今回の装飾本はその性格が如実に現れてました。私は布の表面に凹凸を作る練習、ぐらいにしか考えていなかったのですが、教室のマダムたちはかなり初めの段階からその本の出来上がりをイメージしていて、私に「あなたのその本のコンセプトは何なの?」「どういうイメージがあるの?」「私はこの色で合わせててね、模様は鳥でね、なぜならこの本は…(以下略)」と皆そんな感じでした。コンセプトなど考えていなかった私…。冒険小説に椿を貼ってしまいました。これじゃいけないわ(笑)

・布装丁の本
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この本は表紙に板紙を使っていないので、手帳のように”しなり”ます。毎日通っているアトリエの師匠が作らせてくれました。実は中が白紙です。なのでまさしく手帳。色が分かりにくいですが、濃緑です。カバーの色としおりを同じ色にしたのですが、後で見ると同じ色じゃ芸がないので違う色にすればよかったかなあと思ってます。

・布装丁の本
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上と同じ本ですが、表紙が硬いです。背と表紙の間に溝があるタイプで、日本の単行本(ハードカバー)のような装丁です。この溝を出すのがポイントなのですが、何せ初めてのことだったので、へらを片手に手間取っていると、見かねた師匠がどどーんとやってしまいました。美しく出来たのですが、なんとなく物足りない(笑)。やっぱり布がどんな風に溝に馴染むのかを手で覚えたいですね。師匠が安心して見てられるように技を習得できるよう頑張ります。

・半革装丁の本
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初めて革を使いました。羊の皮です。本の装丁に使えるように、まず革の裏側を薄く削ぐ行程があるのですが、その削ぐ作業が難関です。革の端切れを使って、日々練習を積み重ねなくてはなりません。師匠が言うには1日1時間以上。この本を作ったときから毎日革削ぎの練習をさせてくれて、今励んでます。ごめんなさい、高価な革を浪費させて…。この背中の5本の突起がえもいわれぬ西洋風の雰囲気を醸し出してます。マーブル紙も昔ながらの模様で、この装丁方法も伝統的な手法を教わりました。かなりお気に入りの一冊です。(ちょっとこの写真、背景のマーブル紙とけんかしてますが…笑)

・半革装丁の本
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これも上のものと同じです。色違い。マーブル紙が現代的(?)な感じです。背に金箔を入れる話もあったのですが、何せ中が白紙なので、やめておきました。自分でも、革装丁の本を作ることが出来るなんていうのが感動です。この革を貼るまでの行程では、ただの板紙と印刷紙を綴じたものなのに、革や布を張るところから急に本が命を持つ気がします。うまく言えないのですが、クライマックスを迎える感じでしょうか。作る側としては一番緊張するところでもあるのですが、製本の教室の先生も、アトリエの師匠も、その行程をよどみなくこなしていく様が本当にすごい職人技です。革の装丁をする前に、手が慣れるまで布で練習しなければならないと言われました。本当にその通りです。身に染みます。いっつも失敗してるので。頑張ろう。

背側から見た感じ
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今までに出来た本はこの6冊+「製本方法」の本の計7冊。アトリエと講座で現在進行中の本が7冊あります。それと、総革装丁になる予定の本が1冊で合計15冊になるでしょうか。講座はバカンス(フランスだからバカンスが多い)に入ってしまって授業がないので、仕上がらないまま日本に持ち越しになる本も出てきました。ワーホリのビザってなんで1年なんでしょうか。1年じゃ全然足りませんです(涙)。

by torinokoen | 2008-04-13 23:33 | 製本 la reliure

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